嘘つきピエロは息をしていない


 そいつはその日を境に俺の家に来なくなった。

 夏休み明けに学校に顔を出すと、そいつは教師をやめていた。

 担任からは、新しい土地で新しい生活を始めるらしいと聞かされた。

 結婚するんだと。

 選ばれたのは、俺じゃなかった。

 結局女なんてみんな同じだと思い知った。

 振りかざされた正義感や善意の裏側には真っ黒な欲望が渦巻いている。

 俺は遊ばれたんだ。

 いっときの心の隙間を埋めるのに使われていた。

 本気だったのは、俺ひとりだけ。

 そうして完全に希望を失ったとき。

 中二の冬、転機が訪れた。

『なぁ』

 雪の降る夜のことだった。

 初めて一人で電車に乗り、あてもなくやってきた都会の人混みで

『ラーメン食いに行くんだけど。一緒に来るか?』

 今いる事務所の社長からスカウトされた。

 ……というよりは、拾われた。