そいつの恋人は、聞けば聞くほど典型的なダメ男だった。
浮気を繰り返され、殆ど会うこともなくなったのに、それでも尽くしてしまうと言っていたそいつ自身も相当なダメ女だと思った。
『そんなヤツ。もう別れちゃえばいい』
俺は、俺のことを見捨てず、俺のために尽くしてくれるその女に、いつの間にか驚くほど惹かれていた。
十も年が離れた相手に恋心を抱くなんてどうかしていると思われるかもしれない。
それでも好きだった。
『忘れさせてあげる』
俺は知っていた。
なにを言い、なにをすれば女が喜びそうかってことは。
皮肉にも男に寄生することしか能がない母親を思い出せば容易にイメージできたんだ。
いつもは絶対に出さない甘い声で彼女を誘った。
最初は、強く抵抗された。
けれど彼女は次第に俺を受け入れた。
そのとき俺は、会ったこともない父親に初めて感謝した。
ドブネズミみたいな俺も見た目だけは悪くない。
中二の頃にはすっかり今の俺が完成されていた。
父親譲りのルックスがなきゃ俺みたいなガキには墜ちなかっただろう。
そもそも俺にかまうこともなかったかもしれない。
俺は自分の武器を知った。
嬉しかった。
好きな女を抱いたとき、やっと幸せを手に入れられたと思った。
生まれて初めて心から誰かと通じ合えた気がした。
だけど俺は幸せにはなれなかった。


