嘘つきピエロは息をしていない


 それが、中二の夏。

 猛暑の最中。

 その女が、珍しくヤケになっていた。

 聞けば恋人と喧嘩したらしい。

 そりゃあいい年の女で顔だって可愛かったし。

 料理上手で世話焼きで、恋人がいてもなんら不思議じゃない。

 けれど俺は散々プライベートを知られていて、胸のうちだって次第に打ち明けていたのに、その女には俺に教えていない事があった。

 そいつは他の男のものだった――その事実が、当時の俺の心を大きく傷つけた。

 ひょっとしたらずっと気を使っていたのかもしれない。

 俺相手に恋愛話などしてはよくないと。それでも。

 それが。

 その壁が、俺にとっては耐え難いものだった。

 いくらプライベートな時間を多く過ごしたところで、結局、そいつは俺のことを“可哀相な生徒”としてしか見ていなかったのだと思い知った。