「なにが」
「理想の彼氏で選ばれてた号あったよね」
「ああ。女子中高生向けの雑誌に載ったやつだね」
「読者目線をすごく大切にしてたよね」
当たり前だろ。
それが仕事だ。
そんなこともできないでいたら、一位に選ばれるわけがない。
「男の子向けの雑誌に載ってるときは自分が出過ぎないように、着飾ってるものをよく魅せようと意識してるのに」
「……は?」
「それに気づいたとき、もう、興奮しちゃった。雑誌ごとはもちろん、ページによって別人で。でもちゃんと西条くんで。いったい西条くんの頭の中はどうなってるの? カメラ向けられる前からイメージ膨らませて切り替えてるの? それともプロの人にその時その時でアドバイスもらうのかな……」
俺は、吉川をみくびりすぎていたのかもしれない。
「よく喋る子なんだね。吉川さんって」
「ああ!? ごめんね。夢中になると、つい」
驚いた。
誰に言われるまでもなく自分で考えてこなしてきたことを。
当たり前だけど大切にしてきたことを。
吉川が、気づいてくれていた。
「ちょっと喋りすぎたね。黙るね」
そういうと本当に話さなくなった吉川。
車内が途端にシンとする。
けれど吉川は、まだ話し足りないらしい――なにか言いたげな表情をしては、ハッとして小さく頭を横に振っている。
……なんなのこの生き物。


