「ねえ、西条くん。やっぱり部室に行かない?」
「でも今日は活動ないって……」
「活動日以外も、鍵を借りて使えるの。あそこなら落ち着いて話ができると思う!」

 関係者以外立ち入ることがなく鍵もかけられる部室なら、ファンの子が押し寄せてくることもないだろう。

「俺の家じゃ都合悪い?」

 そういった西条くんの声が少し冷たく感じた。

 なにも私は西条くんを怒らせたいわけじゃないし、家に行きたくないわけでもない。

「あのね、もしも西条くんの家に行ったなんてことがファンの子に知れたら騒ぎになっちゃうんじゃないかな……って思うんだけど」
「たしかに」
「だよね? それじゃあ――」
「待って」

 Uターンしようとした私の手を掴んでくる。

「裏門に車を呼んであるから。そう簡単には見られないと思うよ。部室には、また今度お邪魔させてもらうってことで」
「でも……」
「うちにさ。吉川さんの興味ありそうなものいっぱいあると思うんだ」