「……怒ってないの?」
「俺が君に?」
きょとん、としてみせる西条くん。
「『ムカつく』って」
「あー、あのときは酷いこと言ってごめんね」
申し訳なさそうな表情を浮かべる西条くん。
でも悪いのは私なんだと思う。
昔から、そんなつもりないのに相手のことをよく怒らせてきた。
「実はちょっと嫌なことがあったあとでさ。吉川さんに八つ当たりしてしまったんだ。ずっと謝りたかった」
「え……そうなの?」
「うん。だから水に流してもらえると助かる」
そういって微笑まれ、つられて微笑み返す。
「今日、部活は?」
「ないよ! 基本的には月、水、金が活動日なの」
「基本的には?」
「学祭前は増えたりする!」
「へえ」
西条くんとこんな話ができるなんて嘘みたい。
「このあと用事ある?」
「えっと、このあとは――」
「よかったら、色々と話を聞かせてもらえないかな」
「話?」
「そう。活動内容とか」
ほんというと、これから保先生を探すつもりだった。
ナイキくんの入部届の件はどうなっているのか聞いてみようと思って。
だけど西条くんが演劇部のことを知りたいというなら話は別。
きちんと話をしておくべきだ。
「もちろん!」
「よかった。それじゃあ俺の家においでよ」
西条くんの、家――?
「いきなりお邪魔して迷惑じゃない?」
「平気だよ」
「でも……」
「行こ」
返事をする前に西条くんが歩き始めてしまい、追いかけるようにして隣につく。
予想だにしない展開に頭がついていかないし、緊張してきた。
ふと、昔いっちゃんの家に初めて行ったときもこんな気分だったかもしれないなと思った。
もう何年も前のことなので、そんな気持ちは覚えてはいないけれども。


