「吉川さん」
放課後掃除を終え、廊下をひとり歩いていると声をかけられた。
私はもうこのひとから呼れることがないと思っていたのに――
「……西条くん」
隣を歩いている男子に
「先に帰ってて」
と言い放ち、こっちに近づいてくる。
最後に話したとき、さよならと言われた。
なのにどうして声をかけられたのだろう。
友達を帰らせたということは私に話があるのかもしれない。
けれど、なにを言われるか見当もつかない。
「杉田たちとうまくやってる?」
「え……」
「聞いたよ。うちのクラスの男子が二人、演劇部に入ったって」
「そうなの。二人ともいい感じに馴染んでくれてるよ」
「ひょっとして、俺のことも勧誘する気だった?」
「……うん。実は演劇部に見学に来てもらいたいなって考えてた」
誘う前にファンの子たちから追い返されちゃったけど。
もしもあの日、きちんと話ができていたら、どんな返事がもらえていたのかな。
「過去形なんだ」
「え?」
「入ろうかな」


