やっぱ俺コイツすげえ苦手だ。
マイペースに話してるように見えて着実に距離を縮めてきやがる。
「保は、どう思ってんだよ。吉川のこと」
「んー、デレオが素直にならないのに俺だけ心の内を明かせっていうのか?」
「……言いたくなきゃ言わなくていい」
たとえばこの男が奇跡を起こして俺の母さんを説得できたなら。
演劇部員として吉川と三年間芝居をしていられる。
そんなあり得もしないことを考えると真っ暗で底なし沼みたいな俺の未来が一瞬で輝く。
期待するだけ無駄なのに。
だから考えないようにしてきたってのに。
無限の可能性を秘めていそうなアイツと出逢い、巻き込まれたせいで、多くを望んでしまいそうになる。
チャイムが再び校舎に鳴り響いた。
「やっべ」
走らなければ完全に遅刻コース。
「内貴」
「あ?」
「ところでお前。出身は?」
「ンな話、悠長にしてる場合じゃねぇだろうが。またいつか付き合ってやるよ。……気が向けば」
「シーユー、マックス」


