嘘つきピエロは息をしていない


 俺に眼鏡を投げると、プカプカとタバコをふかし、ベンチに腰掛けた。

 この学校の美術教師である保は、まるでやる気がないことで有名だ。

 授業は『お前らの好きにしろ』と丸投げ。

 生徒たちも『まぁ受験に関係のない教科だし』と他教科の課題や模試対策なんかを始める始末。

 学校側もそれを把握しているだろうとは思うが保の授業について口を出すヤツはいないようで(それで在学生の成績は上がるならと目をつむっているのだろう)、なかなかの無法地帯っぷりだ。

 無駄に顔がいいし大人の色気あるしで、保護者や女子生徒からの人気は圧倒的に高いこの男が、ここにタバコを吸いにきやがるとはな。

 校内は禁煙だっつーの。

「襲っちまえば良かったのに」
「アホなんですか」
「根性ないねぇ?」
「……セクハラ怠慢教師」
「ウチキなウチキくん。今朝はえらく威勢いいじゃないの」

 この男の前では猫かぶる必要なさそうだ。もっとも通用しそうにもねぇ。

「教師が生徒をそういったあだ名で面白おかしく呼ぶのはどうかと――」

「さっき妙な噂を聞いたなぁ」

 ……ウワサ?

「A組の地味メガネUは実は裏番長だった説」

 おいそれ俺のことじゃねえか。

「イニシャルUってウチキのUだろ。そこはNにしとけよな?」
「……どっちでもいいわそんなもん」