嘘つきピエロは息をしていない


 チャイムが校舎に鳴り響く。

 朝のSHR開始五分前を告げるものだ。

 時間は当たり前のように過ぎてしまうが、微かな吉川の温もりと吉川を抱きしめたときの感覚だけは、俺の身体にいつまでも残っているような気がした。

「お前は教室向かわねーの?」
「……行きますよ」

 芝生に置きっぱなしにしていた眼鏡をかけようとして、ひょいと取り上げられた。

「なるほど。これがお前の仮面か」

 うーわ。

 普段ボーッとしてそうで相手のことよく見てるヤツ、いるよなぁ。

 まあ俺のことなんだけど。

 保もその口か。

「なんのことですか」

 一番関わりたくねぇ。

 こういうタイプ。

 俺の倍ほど生きてそうな分、余計(こじ)れてそうだしな。

「朝っぱらから。青空の下。お盛んだねぇ、優等生くん」
「は?」
「スカートん中くらいは手ぇ入れてみた?」

 なに言い出すのコイツ。

「さっきのはただのアクシデントで。あの子が俺の方に倒れ込んで来たのを支えてやったにすぎません」
「ははは。真面目に答えんなよ。ジョークだ」