『きり。この本おもしろいよ』
いっちゃんと会えない日、いっちゃんが私のために選んでくれた本を読んでいるときの私は、一人ぼっちでも、一人ぼっちじゃなかった。
『すごいな、きり。全部覚えたのか?』
絵本を丸暗記して朗読した私を、いっちゃんは褒めてくれた。
『きり。お芝居をしようか』
私に、演劇を始めるきっかけをくれた。
絵本やアニメーション作品の中に登場するキャラになりきる楽しみを知った。
『いいかい? きりの役は――』
――これは、いつの記憶だろう
『それじゃ、行こうか、きり』
いっちゃんがほほ笑んで、私を、どこかへ導いてくれている。
幼い私はどこへ向かったんだろう。
……どこでもいいか。
いっちゃんと一緒ならどこへ行ったって何をしていたって私は幸せなんだから。


