嘘つきピエロは息をしていない


「そうそう、いっちゃんの家には書斎があって、そこに案内してもらったときは胸が踊ったっけ。図書館みたいでわくわくするよ」
「インドアそうだもんな、一色って。妙に白いし。つか図書館って……アイツぼんぼんか?」
「ボンボン?」
「金持ちってこと」
「ああ、うん。そうだよ。庭も広いし停まってる車は全部高そうだし」
「全部って……何台あんの」
「見えてるところには、三台かな」

 でも車庫の中にまだあったと思う。

 門から玄関まで遠い。

 いっちゃんの誕生日にはパーティーが開かれて、夏はバーベキューしたり花火するからおいでって呼んでもらったこともある。

「庭の池には高そうな鯉が泳いでいるよ」
「そんな金持ちが吉川に弁当届けにきてたとかシュールすぎるだろ」
「いっちゃんのことはお城に住んでる男の子って感じが昔からしてたし、今もそう思ってる。でもみんなの前でお金持ちだってこと話さないから知らない人もたくさんいるみたい」
「隠してるのか?」
「そういうわけじゃないと思う。でも主張したりはしないかな」

 新見先輩が『お金いくらあっても足りないー。秘密道具欲しい!』と嘆いていると、『四次元ポケットは最強だな』と同じ目線で返している。

 けっして自分はみんなより贅沢な暮らしをしている、などと驕ったりはしない。

 かといって謙遜もしない。

「キョーダイは?」
「いっちゃん? 一人っ子だよ」
「そんな環境でのびのび育てば、あーなるわけか」
「違うよ」
「あ?」
「……のびのびとは、違うかな」