嘘つきピエロは息をしていない

「……え」

 閉じていた瞼が、ゆっくりと開かれる。

 綺麗な瞳はおぼろげに空に向けられている。

 眠っていた彼が、静かに目を醒まし、ただ空を見つめているだけなのに。

 その仕草ひとつひとつが絵になる。

 目が離せない。

 追わずには、いられない。

 この学校であなたと出逢っていなくても、世界の裏側にいても――いつか、あなたを見つけ出していた自信がある。

「ほんと吉川は話すの下手くそだな」

 やっとあなたが私を見てくれた。

「なんのことかサッパリなんだよ。俺にわかるように言え。ちゃんと聞いてやるから」

 イジワルなこと言ってきても。

 迷惑そうにしていても。

 私の気持ちを汲み取ってくれる。

 今伝えたいことがあること、わかってくれている。

 待ってくれている――

「付き合って、ない」
「……は?」
「私、いっちゃんの、彼女じゃない。恋人のフリ、してた」

 目を見開くナイキくんの様子から、それほどに衝撃を与えてしまったのだということが伝わってくる。