「あれ、いっちゃん。どうしたの? 一年生の校舎まで来るなんて」
いかにも育ちが良さそうな爽やかな男。
この間友人と歩いてるところを見かけたが輪の中心になっていた。
……笑えるくらい俺と正反対なヤツ。
「忘れもの」
「あ」
一色が吉川に手渡したのは小さめの鞄だった。
「お弁当……!」
「和子さんから、あずかってきた」
「うそ!? 忘れてた?……ごめん、ありがとう!」
「友達?」
俺を見たあと、再びきりに視線を戻す一色。
俺が内藤だと気づかれてはいないようだ。
カズコさんというのは、きりの母親だろうか。
一色は、きりの家族とも面識があるのだろうか。
「うん。ナイキくんだよ」
「……へぇ。友達増えたんだ」
なんだ?
今の間。
「そうなの!」
吉川、自然に俺のこと誤魔化せてる。
やればできるじゃねーか。
「そっか。きりのことよろしく、ナイキくん。仲良くしてやってくれ」
「どうも。吉川の、お兄さんですか?」
俺の突拍子もない質問に、吉川が驚いている。
お前そこは顔に出すなよ。
揺さぶりをかけた。
この際、吉川と一色の関係をハッキリさせたかった。
知りたかった。
だけど俺は選択を間違えてしまったらしい。
二人に踏み込んだことを、すぐに大きく後悔することになる。
「いや。俺は、きりの彼氏だ」


