「ミカ、大丈夫か?」
仁がユニットバスのドアを開けて中に入ってきて、流しの前にいる俺に声をかけてくる。
仁は吐きづらいと思ったのか、パーカーのフードを俺の頭から剥ぎ取ってくれた。
「うっ、うぅ……」
俺は仁に背中をさすられながら嘔吐した。
「……はあっ、はぁ……っ、悪い」
幾分か落ち着いたところで、俺は言う。
「ああ」
「痛っ!!」
凹んだ傷跡をさすられ、俺は喘ぐ。
「……悪い。これって?」
「……虐待の跡。去年、親父が俺の頭を使って、ワインを無理矢理わったんだ」
自嘲気味に俺は話した。
「はっ!? ……お前の親父、狂ってるな」
「アハハ、知ってる。だってあいつ人殺しだしな」
苦虫を噛み潰したような顔をした仁を、俺は嘲笑った。



