俺はある店の駐車場に、バイクを停めた。




『White cat』という名の小さなBARだ。



「……おー、おはよ?銀」



ドアを開けると、オーナーが声をかけてきた。


「…………はよ、白猫」




「……上がるぞ」




「ご自由に?」




白猫は軽く笑った。



朝はまだ開店前だからか、いらっしゃいなんて形式的な言葉もない。それに、白猫は俺の開店前にくる非常識さを、全然怒りもしない。俺は白猫のそういう軽さが好きだ。


立花葵(タチバナアオイ)。



楓の4つ上の兄で、紺色の髪につり上がった瞳が印象的なこのBARの若いオーナーだ。


通称白猫。


白猫店のオーナーだから白猫。安直な呼び名だ。


関係は、兄みたいなもの。



俺が虐待のことを明かした男は、白猫で二人目になる。