俺は早朝、仁の家を出た。


仁が洗ってくれていたグレーのパーカーに着替えてから。


夕飯を食べている時も、仁は言った通り何も聞いてこなかった。





……ホント、やけに気が利く奴だ。







パーカーのフードを深く被り直してから、俺は振り向く。



「……ありがと」






小さな声で仁の部屋の前でそう言ってから、俺はバイクの鍵をポケットから取り出した。


俺はマンションの真横にあった駐車場に停まっていたバイクに鍵を差し込んで、足に響かないように、ゆっくりめに加速させた。