「う……っ、………っ」
涙が零れ落ち、床に雨水のように落ちる。
「謝れ。俺の犬になるともう一度誓え。
十年前みたいに、泣いて泣き叫んでな。殺してやろうか」
真っ赤に染まっている髪を掴みあげ、父さんは俺を睨んだ。
負けじと、睨み返す。
「……誰が、あんた……なんかに……あ゙あ゙あ゙!!」
父さんはボロボロになったワイン瓶を投げ捨てると、もう一つワイン瓶をとって、それで俺の背中を勢いよく叩いた。
「あ゙あ゙あ゙っ!!」
身体中が痛くて叫びすぎて出しづらくなった声を無理矢理張り上げて、俺は悲痛を上げる。
そうでもして叫ばないと、正気を保っていられなかった。
………これは、罰なんだろうか。
キョウイクという名の制裁。
俺が楓を巻き込んだ罰……?
「ぐっ! 嗚、呼……」
父さんは俺の背中を足で踏み、左足をワイン瓶で潰し続けた。
痛い。痛い痛い痛い。
ボキッと、骨が折れた痛みが響くごとに意識が遠くなっていく。
「かは……っ」
血を吐く。
何度も、何度も。
……クソ痛ぇ。
………なぁ、楓。
ごめん、守れなくて。
俺は無関係なあんたを巻き込んじまった。
最低の彼氏だな、本当に。
歪む視界の中で最後に見たのは、俺を睨みつける父さんの憎たらしい顔だった。



