悪寒がした。
「立て」
父さんは両腕についている鎖を引っ張って、低い声で囁いた。
「いったっ!!」
腕の皮と肉がぎゅぎゅっと締め付けられる。めちゃくちゃ痛い。
「早く立て。立ったら手を離してやる」
俺は慌てて立ち上がった。
鎖から手を離すと、父さんは俺の背中を思いっきり蹴った。
手を離した瞬間に蹴られたから俺は受け身なんか全然取れなくて、衝撃で真っ白い絨毯の敷かれた床に勢いよく体をうちつけた。
……いてぇ。
父さんは倒れた俺に見向きもせず、部屋の隅にあった酒瓶の棚からガラス製のワイン瓶を取り出して、俺の背中を足で踏んだ。……マズい。身動きが取れない。
「あ゙あ゙あ゙!!!!」
ワイン瓶で頭を思いっきり叩かれた。ワイン瓶が割れて、その中身が身体中にかかった。
酒臭いワインの匂いが鼻につく。
血をかけられてるみたいで、どうしょうもなく気持ち悪い。
……吐きそうだ。
自分の血の匂いと、部屋に充満しているワイン酒の匂いが混ざって、悪臭のような匂いが俺の鼻腔を掠めた。
吐き気がますますつのる。
「ゴホッ、ゴホッ!」
父さんは咳き込む俺を一瞥してから、棚からプラスチック製のワイン瓶を取り出した。そしてそれで俺の右足の太腿や膝を何十回と叩いて、骨を粉々に砕いた。
「……うっ、うあっ!?
あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!」
あまりの痛みに、俺は声がかれる勢いで悲鳴をあげた。
「うっ!!!」
痛ぇ……。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。



