取り押さえろ……?
父さんの言葉が、俺の脳内で繰り返される。
「俊平っ!!」
父さんの横にいた執事が、楓の腕を掴んだ。
そのまま楓が店の外に連れていかれるのを、俺はただ見ていた。
……アホか。
助けにいけよ、この意気地無し。
クソ野郎……っ。
足が硬直したみたいに動かなくて、
身体が小刻みに震えだした。
「閉じ込めてやろうか、部屋に」
「……好きにしろよ。ただ、楓は返せ」
俺は怖がりながらも威勢よく言った。
なんで口だけ達者なんだよ!!
「そりゃあ無理だな。……お前はやってはいけないことをしたんだから。商品は、休日すらないんだよ」
「いたっ!!」
父さんは俺の腕をぎゅうっと握りしめて、そのまま腕を引いて店を出た。
腕にとんでもない圧がかかっている。振り解けない。
父さんはショッピングモールの手前にあった横断歩道のそばで、足を止めた。
俺の隣には執事に腕を掴まれた楓がいた。
「キャッ!」
執事は楓の身体を押し、赤信号の横断歩道
の上へ楓を投げ出した。
「楓っ!!」
叫び、助けようとする俺の腕に父さんはポケットから取り出したスタンガンを突きつけた。
「ああっ? あがっ!!??」
父さんは苦しむ俺を一瞥しながら、掴んでいた腕を離した。
バランスを失った身体が道路に勢いよく叩きつけられ、俺は頭から血を垂れ流した。
プー!!!!
そして、身体が痺れて身動きも取れない中で、車のクラクションの音が、無残にも楓の死を伝えていることだけが分かった。



