夜。
ドアが開いた。
「……俊平」
「母さん……っ」
体育座りをして縮こまっていた俺を、メイド服を着た母さんが、そっと抱きしめた。
俺の額から流れていた血を、母さんがタオルでいたわるように拭う。
「……お父さんにはなんて言われた?」
「……今日の晩飯は抜きだって」
「じゃあ、もうここからは出ていいよ。お風呂入ってきな」
母さんは俺の頭を撫で、笑った。
「……うん」
「ごめんね、何にもできなくて。それでも私は、あなたが大好きよ俊平」
母さんだけが俺の味方だった。
俺の学費も、生活費も、全て父さんの金だから母さんも俺と同様に父さんに逆らえなかったけれど。
俺は、男に名前を呼ばれると鳥肌がたって死にたくなるけど、母さんとか女の人に呼ばれるのはまだ平気だ……。
俺は母さんが好きだ。でも正直、実の息子が暴力を振るわれているのに庇おうともしない母さんは、父さんよりも怖い。
何を考えてるのか、よくわからないから……。
でも、俺はそれでも母さんが好きだ。家で俺の心配をしてくれる人は、母さんしかいないから……。
俺の味方は、母さんだけだから……。



