……怖かった。
父さんも、俺の身体にアザが日に日に増えるのを見て見ぬふりする母さんも。
一日一回暴力を振るわれるのは当たり前だった。
――ここは地獄だ。
俺は靴を脱ぐと、早々に俺のことを商品だという父さんに腕を掴まれて、自室に連れてこられた。
制服のままなのに、そんなこともお構い無しに。
頭の上に服を投げ捨てられ、着るように目で促してくる。
「……1分以内に着始めなかったら殴るからな」
鋭い眼光でそう言われ、俺は慌てて服を着た。
執事の衣装だった。
「うん、やっぱり似合うな。俊平は最高の商品だ」
笑って、満足そうに父さんは言った。
褒められても、嬉しいなんて少しも思わなかった。
父さんは俺を商品だとしか考えていない。
そう実感すると、いつもいつもどうしようもなく死にたくなる。
商品と称して名前を呼ばれるたびに愛されてないのを実感して、虚しくなる。
俺は自分の名前も、顔も。自分の何もかもが嫌いだ。
俺は偽物だから。
人形みたいに整ったこの顔も、この体型も、全部父さんのあらゆる命令によって作り出されたものだから。
………今も昔も、俺は自分の全てが嫌い。



