倉庫に戻って幹部室に入ると、俺は直ぐにベッドを見た。
ミカはまだそこにいた。
重症だからそれが当たり前なのだけれど、逃げてなくて少しほっとした。
「俊平」
結賀はすぐにミカに声をかけた。
大方、俊平というのはミカの下の名前だ。
結賀はただ、好奇心だったと思う。
なんでそんなに名前を教えるのを嫌がってたのか気になったんだ。
俊平なんてキラキラネームでもないし、恥じるようなとこはなんもなさそうなのに、やたら嫌がっていたから。
結賀も、廉も俺も、伊織も、すごく気になったんだ。
様子がおかしい。
ミカがフードの上から両手で頭を抱え、身体を小刻みに震わせ始めた。
「ミカ?」
腕をつかもうとすると、結賀は思いっきり手を振り払われた。
「はっ。はぁっ、……はあっ、はぁっ」
呼吸が早い。すごい速度で乱れている。
「はっ。やだっ、やっ……嫌だ」
ミカが体をガタガタふるわせて、うわ言のように呟く。
瞳から涙が溢れていた。
名前呼ばれただけでこれか?
……こいつには一体何があんだよ。



