【立花楓之墓】
しゃがみこみ、墓に掘られたその文字をなぞるように触った。
岳斗の時と同じように、
伊織が花を切って、緋也と嘉が花瓶を洗いに行った。
そして、また同じように遥と香里奈が花瓶に花束を入れた。
線香を分けて、一人一人手を合わせた。
「………楓、お前が愛した男は、兄の俺が責任をもって守らせてもらうよ」
手を合わせ終わった俺が立ち上がると、真後ろにいた白猫は、そう静かに呟いた。
「葵……っ」
俺は、白猫を初めて名前で呼んだ。
葵は、ずっと俺を責めないでいてくれた。
実の妹が死んで、こいつも凄い辛かっただろうに……。
そもそも俺と楓が出会っていなければ、楓は死ななかった。
結局、殺したのは露磨と父さんでも
そばにいたのに、守るべき時に守れなかった
俺は罪人も当然だ。
「ばーか。
泣きそうな顔してんじゃねぇよ。
そんなんじゃ俺の妹が報われねぇっつーの!」
葵は、爽やかな顔をして俺に笑いかけた。



