目の前にいたのは、血流の幹部だった。
二週間くらい前に、俺に水をぶっかけた奴だ。
確か、名前は嘉。
「嘉。……何で」
呆然とした緋也の両肩を、嘉は叩いた。
「そんなことは後で説明スっから、早くはしご使え!!」
「そうだよ!」
「うん、早く逃げよ!!」
嘉の後ろには、遥と香里奈もいた。
その2人は、嘉に賛同するかのように順番に声を上げた。
「あぁ、悪い」
緋也は振り向き、
テラスの床を叩いた。
まるで道路のマンホールが取られて出来た穴のような丸い空間が床に出現して、その下に白いハシゴのようなものが見えた。
何だコレ……。
緋也の親、どんだけ金持ちだったんだよ……。