俺は、緋也とともに3階のテラスまで逃げた。



1階にある裏口には露磨以外の父さんの使用人がいるかもしれないから、一度高い所に逃げることになった。




どうやらここには、脱出のための非常用はしごがあるらしい。



どうやったらそれが出るのかは、まだ緋也から教えられていないけれど。




露磨を見ると、嫌でも10年前の父さんの犬になると誓ったあの日のことを思い出す。




右腕のパーカーの袖をめくると、


手首に、青黒い鎖模様の跡が見えた。





10年に南京錠をかけられて拘束されたあの日から、この跡はずっと残っている。



「うわっ、何それ。痛そう……」



俺の手首に触れ、緋也は気の毒そうな顔をした。





「……もう全然痛くねぇよ。



ただ、こうして見てると、胸がすげぇ痛い……」




せっかく泣き止んでいたのに、



片目からまた涙がこぼれ落ちた。






俺は……また露磨に奪われるのか?





今度は父さんではなく、緋也を。