なんで自分がこんなことをしているのか、全然分からなかった。
「……ミカ、力込めすぎ。痛い」
握られた腕が赤くなっていたのに気づいて、俺は慌てて両手を放した。
「……ご、ごめん」
何してんだ、俺……。
「いいよ別に。大丈夫?」
赤く腫れかけた手首を摩りながら、緋也は俺のことを心配そうに見つめた。
「……あっ、あぁ」
俺は、歯切れ悪く頷いた。
父さんが帰ってくるまで残り2日になり、
俺の心は、かなり取り乱されていた。
時間は迫っている。
緋也が絶対に父さんを捕まえられるとも限らないし、
暴力を振るわれたあの1年ほど前までの日々を思い出して、俺の心は不安定になっていくばかりだ。
「はぁー」
緋也は俺の様子を見て、盛大にため息を吐いた。
「……あのね、身体は震えてるし、顔はまだ青白いまんまでああって頷かれても、説得力の欠片も無いんだよ」
緋也は、肩を落として呆れたように言い放った。



