「緋也……様」
魁人は、僕の涙を拭い、
名前を呼んだ。
小さい頃の出来事が蘇ってきた。
『もう名前は決めた?』
小さな小さな赤ん坊を、女の人が抱いていた。
『あぁ、緋也だ。
緋い色がよく似合う、情熱を持った真っ直ぐな子になりますように。
城島緋也だ!! いい名前だろ?』
女の人の横にいた男の人が、赤ん坊の頭を撫でて、優しそうに笑った。
『ええ、そうね!』
女の人が笑って、赤ん坊をぎゅっと抱きしめた。
『あー!!』
赤ん坊は、返事をするように声を上げた。
『『あーかやっ、緋也!!』』
女の人と男の人は嬉しそうに笑いながら、赤ん坊の頭を撫でていた。
赤ん坊も、とても嬉しそうに笑っていた。



