俺は、咄嗟に伊織を追った。






「伊織っ!!」







中庭に入ろうとしていた伊織の左腕を、俺は右手で掴んだ。




「……ごめんね。今一番泣きたいのは、仁なのにね。




ごめん。演技だって、ミカは理由もなくあんな態度しないって、分かってるけど……っ、それでもやっぱり、許せなくて……」





右手で涙を拭う伊織の身体は、震えていた。




「伊織……」


「単細胞でごめんね。本当に、あたしが泣いてどうすんだって話だよね。すぐ、泣き止むから……っ」







紅く腫れた目をした伊織は、俺の方に振り向いて、作り笑いをした。




「ありがとう、伊織。……………俺なんかのために、泣いてくれて」