未完成のユメミヅキ

「ええ、もうなんなの」

「俺、部活行くから」

「ちょっとタロちゃん」

「どうもならなくて困ったら連絡しろよ。あと、亜弥も誘って体育館に来いよ」

「それはもちろんだけど……タロちゃん、なにがあるか知ってるの?」

「知らない」

 知らないのに来いとはどういうことなのだ。顧問の先生に絶大なる信頼を置いているのはよいことだけれど。

「先生が俺たちにマイナスなことしないと思う。あとなんかワクワクしてるっぽいし、なにがあるか楽しみ。だから必ず連れて来てくれ。頼む」

 タロちゃんは爽やかな笑顔を残して走り去っていった。

「うそー……」

 誘うって、なんていえばいいの。
 バイトがあると言われたら終わりじゃないか。

「胃が痛い」

 廊下にぽつんと残されて途方に暮れる。

 明日の放課後、和泉くんをおびき寄せ……違う、誘い出すためにどうしたらいいのか考えなければいけない。

 なにがあるのか分からないけれど。

 今日中になにかしら連絡を入れておいたほうがいいだろうか。もう帰ったかもしれないし、バイトかもしれない。

 亜弥は習いごとがあるからもう帰ったから、夜にでも相談してみようかな。明日、彼女も誘わないといけないし。
 わたしは一体、なにに巻き込まれているのだろうか。気が重いと思いながら、教室へ戻った。