校舎を出て、校門へ向かう。グラウンドにはもう野球部の生徒がいて、ランニングを開始している。

「今日、早く帰らないといけないとか、ある?」

 後ろを振り返って、和泉くんが聞いてきた。慌てて隣に並ぶ。前後で歩いていたら、話ができない。

「ううん。大丈夫。用事もないし」

「俺、今日バイトなんだけど、一緒にこのまま店に行かないか」

「う、うん?」

「その、涼子さんもお詫びしたいって。先に言えば良かったんだけど、ごめん、なんか急に。連れてきなさいって言われて。あ、時間あったらで。無理しなくていいから」

 少し慌てた様子で説明する和泉くん。気を遣ってくれているのが分かる。


「ごめん。なんか、急にこんなこと」

「ううん」

 傘を貸してくれようとしていたのに飛び出してきてしまったので、謝らないといけないし。涼子さんは悪くない。

「日曜日、本当にごめん」

 校門を出てすぐ、立ち止まって和泉くんが頭を下げる。

「わたしこそ、ごめんな、さい」

 慌ててそう返事をする。

 再び歩き出したけれど、会話が続かない。駅へ向かって歩いているけれど、なにを話していいのか分からなかった。

 日曜日はごめん。それはわたしも一緒だったから。

 そこから駅に移動して、ふた区間電車に乗り、お店に向かった。

「無理しなくていいから、具合悪くなったら言って」

「う、うん」

 大丈夫だよ。元気モリモリ! と拳を突き上げたいところだけれど、和泉くんに心配されるのも心地よいなと思ったので、黙っていた。わたしって性格が悪いかもしれない。


 電車通学の生徒も一緒になるし、視線が気になって仕方がなかった。
 実際、誰も見ていないし、同学年じゃないかもしれないのに。終始わたしは下を向いていて、和泉くんも言葉少なで、あまり会話の無い移動だった。