もぞもぞとベッドに入った。凄く具合が悪いわけではないし、眠くもない。とはいえ、風邪をぶりかえすと困るから、休んでいないといけない。これはもう読書だなと思って、読みかけの本を開いた。

 ゆっくり読み進めて、ちょうど読み終わった頃、お母さんがお昼ご飯に呼びに来てくれた。あまりお腹が空いていなかったので、軽くお粥を食べる。それからお昼の分の薬を飲んで、部屋に戻った。

「退屈だなぁ」

 ベッドに寝転がり、つい口にした言葉はふわりと消えた。

 和泉くんのことばかり考えていた。出会ってからずっと、きゅっと胸が苦しくなるのは、和泉くんのことだ。

 大事にしたい存在だった。急に距離が近くなり、わたしは図々しくなったのかもしれない。

 気付かないうちに、自分の思いを押しつけていたのかなと思うと、泣きたくなる。

 考えていると涙がじわりと出てきたから、慌てて頬を抓った。

 この何倍も辛いのはきっと和泉くんだと思うから。それに、たぶんもう、和泉くんはわたしと話したくないと思う。だから涙が出てくる。

 だってたぶん、和泉くんに嫌われた。もうきっと、笑っておしゃべりもできないだろう。そんな風に考えると胸が苦しくなった。

 憧れだったひとに嫌われるって、こんな気持ちがするんだな。初めてだ。泣くのを我慢していると、喉が詰まって痛くなる。

 置いていた携帯が震えたので見ると、メッセージが入っていた。誰からだろう。画面に出た名前を見て、一瞬、理解ができなかった。

「嘘、和泉くん?」


 ベッドから飛び起きた。なんだろう。もう連絡しないで、とかだったらどうしよう。

 ドキドキしながらメッセージを確認する。一気に体の熱が上がったように感じる。風邪をぶり返したのではないだろうか。


『日曜日はごめん。学校、休んでるって聞いた。大丈夫?』

 ごめんという謝罪の文字が飛び込んでくる。そんな、謝らなきゃいけないのはわたしのほうなのに。

 どうしよう、なんて返信しよう。1回寝る? いやそんなことをしていないで早く返信しよう。時間からして、休み時間なのだ。挨拶から? いや、違う。震えて定まらない指で、ごめんなさいと打った。