まだぼんやりする頭で、眠れなかったら読みかけの本でも読もうかなと思った。

 お母さんは夕飯の支度をしながら、アイスがあるだの、飲み物は間に合っているかなどと忙しく動いている。

 とりあえず、お粥を食べることに専念しながら、テレビを眺めた。『仙台sparrows』の試合結果がテロップに出る。ホームで勝利をあげたとのことだった。地元のアナウンサーも嬉しそうに話している。

 この黄色いユニフォーム、小谷先生も着ていたんだよぁ。将来、タロちゃんも着るんだろうか。でも、分からないよね。地元だったら嬉しいなと思うけれど、他県のチームに入ったりして。

 未来はどうなるか分からないけれど。分からないから、だから。望む未来がみんなに来るといいのに。
 そこまで考えて、溜息をつく。

「ごちそうさま」

 熱で消耗したせいか、考え事をしたくなかった。ぼんやりしていたい。
 立ち上がって、お母さんに声をかける。

「部屋に行って寝るね。少しまだ怠いかも」

「発熱のせいだね。ケーキ食べる? アイスもあるよ」

「いい、いらない。ありがと」

 眉間に皺を寄せながら額を触ってくるお母さんの手を、笑いながら受けた。小さい子供じゃないのになぁ。

「大丈夫だよ。さっき起きたばかりだし眠れないかもしれないけれど、横になる」

「お薬飲んでね。お父さんが帰ってきたら、寝ているって言っておくね」

 わたしは頷いて、リビングを出た。

 部屋に戻って、病院から貰った薬を飲んだ。ベッドに横になる。やっぱりまだ少しだるくて、でも眠気があるわけではなかった。眠った方がいいのは分かるけれど、すぐには無理だと思う。

 本棚から漫画本を数冊、取り出す。読みかけの本にしようと思っていたけれど、頭が疲れるし、漫画本の絵を眺めていたほうが良さそうだ。

 熱が下がって良かった。漫画本をパラパラとめくって絵を見ていると、瞼が下がって来る。おかしいな、たくさん寝たのに。とても眠いんだ。

 亜弥とタロちゃんに返事をするのを忘れている。ああ、でももう起きていられない。
 半分食べて残したプリンが視界に入る。あれの続き、食べたいな。

 アイスもシュークリームも食べたい。あれこれと頭に浮かんでくる。食欲が出てきた兆しなのだと思うと、早く元気になりたいと思う。

 和泉くんが運んでくれたロールケーキが、食べたいな。