「わかった。そんときは頼む」


「うんっ」
 

大きく肯定されて、楽しい気持ちになる。


もう夜だからこれから離れると言うのに、咲桜はちっともそんな感じにさせない。


「じゃあな――一応外だから、キスはまた明日」
 

咲桜の頬を捉えて囁くと、大袈裟でなくびくりとされた。


それにまた笑いがもれてしまう。
 

何回か頭を撫でて、「冷えるから早く戻れよ」と言って離れた。


咲桜は手を振って見送る。


……嬉しいけど、本当に風邪ひかれたら嫌だから戻れ、と華取の家の方を指さしてから一度だけ手を振ると、咲桜はこくりと肯いた。


咲桜は満足したように踵を返して――止まった。


ぴたりと。心臓まで止まってしまったかのように。