「咲桜ちゃん。流夜には主咲と逢ったこと、言わない方がいい」
「え……なんでですか?」
「流夜は主咲が苦手だから」
みたいですね。
降渡さんも苦手なようだし。
……吹雪さんの言う通り、言わないでおこうか。
訊かれたら答えるけど……あえて触れたくはない気がする。
「ふゆ――
「笑満ちゃん」
言い差した笑満を遮って、吹雪さんが口元に指を立てた。
「咲桜ちゃんが主咲のことを知れたのは、流夜との間に未来をかけているからなんだ。笑満ちゃんも、遙音と結婚とかしたら、知っていい話なんだ」
「え―――」
ボンっと、笑満が顔を真赤にさせた。吹雪さんは微笑んでいる。
「け、けけけ」
「だからその人のことは今はまだ内緒。いいかな?」
笑満は紅い顔のままでこくりこくり肯いた。
吹雪さんのやり口にはまっている。
視線だけで私を見てきた吹雪さんの瞳は、何かを案じている風だった。
カランと、軽い音が鳴った。二人分の足音が聞こえた。



