朧咲夜5-愛してる。だから、さようなら。-【完】



流夜くんに『つかさ』の名を教えてもらったとき、司くんには二つの呼び名があることも少しだけ聞いた。


本名は『司國陽』。


しかし、彼だけを呼ぶときは『主咲』という字を当てるらしい。


なんでも当主だけが名乗れる呼称だとか。


年齢は聞いていなかったから、さっき知ったときはもう当主でもあるのかとえらい驚いたが。
 

遙音先輩に斎月のことは話すなと言われているけど、笑満や頼への口止めはされていない。


でも二人に話せば先輩にもばれてしまうだろう。


「着物? もしかして主咲に逢ったの? 咲桜ちゃん」
 

そう言ったのは吹雪さんだった。珍しく目を見開いて、驚いた顔をしている。


「あー……ハイ」
 

吹雪さんに嘘はつけない気がする。曖昧ながら肯いた。


「つかさ? さんて言うの?」
 

笑満が首を傾げたので、「そう」とだけ答えた。


「……あれが出張ってきたか……」
 

吹雪さんは口元に指を当てて独り言ちている。ふいっと顔をあげた。