まだ背筋の冷えが収まらない。降渡さんの本当の瞳を見た気がしたからか。
いつもは優しさで覆われている降渡さんの本質。本物の雲居降渡。
「―――」
はは。思わず空笑いが浮かぶ。けれど声は音にならず、私の喉奥に消える。
流夜くん以外で初めてドキドキした。勿論、恋愛なんかじゃない。生命の危機という意味で。
忘れていた。流夜くんや降渡さんが普段、あまりに普通過ぎるから。
その見えない隔絶の壁の向こう、こちらに薄闇をかけて見させないようにしている世界で、三人は―――……
ギリッと唇の端を噛んで、意識が思考の世界に持って行かれそうになるのを止めた。
今は先輩と笑満のことだ。三人の所業に哀しい気持ちになっているときではない。
みんな辛いだけじゃないか、なんて考えるのは今じゃない。
今じゃない。



