宮寺先生を責める気持ちを抱いたことはなかった。


桃子母さんのことも、父さんならいつか知っていたはずだ。


それを暴いてしまったのが、たまたま宮寺先生だっただけで。


もしかしたら尊さんだったかもしれない。
 

今、このタイミングで、追いかける道を選べるときであったことが、せめてもの幸いだったと思う。


「……華取さん、……すみませんでした。俺のしたことは、間違いでもあるので、許せることでも謝らせてください」
 

今度は宮寺先生が深く頭を下げた。
 

……ひとつ、心に漂っていたものが融けていく。


少しだけ、泣きたくなった。


「……先生、もしよろしかったら勉強教えてくれませんか? ご存知かと思いますが、私、大学へは行きません。行政書士になるための勉強をしてます」
 

そうお願いすると、宮寺先生は虚を衝かれたような顔をしたあと、唇を噛んだ。


そして柔らかい笑みを見せた。


「勿論です。俺に出来ることなら、何でも」

 
――私の出来るゆるし方のひとつ。
 

自分に力を貸してほしい。
 

流夜くんを追うために。


「今、吹雪さんと降渡さんもいるんです。入って行かれませんか?」


「あ、じゃあ――」
 

私に呼ばれて、宮寺先生も《白》へと向かった。