「ん? なにかしら」


「私……すきな人がいるんですけど、その人、今、近くにいないんです」


「……うん」
 

私のしんみりした語り口に、絆さんも真剣な顔になる。


「私は、その人と一緒にいたくてですね……。どうにか追いかけたいと思ってるんですけど、たぶん今のままの私では、見つけ出しても、傍にいさせてくれないと思うんです」


「ふむ」


「その人は……犯罪学の分野で生きていて、私では、ダメだって言われました。普通の世界にいる、今の私では……」


「犯罪学? なら法律家になっちゃえば?」
 

絆さんの何の躊躇いもない提案に、私は顔をあげた。


「法律家、ですか? 絆さんみたいな弁護士?」