背は私より高く、容姿は画を切り取ったようにつくりものめいて端麗。


文字通り、端々まで麗しく隙がない。


斜め上の空を見上げていて、私の視線には気づいていないのかそのままだ。


流夜くんは『美形』と称されることが多いとマナさんから聞いたことがあるけど――ついでに教えてくれた、三人の称を並べると、降渡は『美丈夫』、吹雪は『美人』と言われるそうだ。最後は言ってはいけない一言なので、その称され方も高校以来聞かれなくなったそうだが――三人の方が人間じみている。表情と体温と感情が見えるつくりをしているのに対して、青年は一切合切の感情も体温も持ち合わせていないように、しんとそこに立っている。


ただ、そこにいることが当たり前のように。


樹が、葉擦れ以外に揺れることなく泰然と構えているように。
 

ふと、青年の視線が下がった。


私はまだ青年の手前にいて、一瞬焦ってしまった。


いや、別に見ていたからと言ってそう怒られることもないはずだけど……怒られたら謝ろう。


今、自分は急がないと、


「華取咲桜さん、でしょうか」