『華取』は、歴史の中で政治を裏から操る大家の、駒の一つだったらしい。


呪術と傀儡術を用いて、主人格たる家に仕えて来た。


それがいつか、華取自身が主を傀儡(かいらい)として操る立場にまでなり――一人の本家の嫡子によって、火の中で全滅させられた。


末弟を除いて。
 

難儀だ。


在義さんが家の再興なんかを考える人でなくてよかったと思う一方、だからこそ朝間先生の想いは叶わない。


あそこまではっきり好きだと宣言されても何もしない在義さん。


俺が踏み込めるのはここまでなのだろうか……。
 

――明日は修了式。もうすぐ年度が終わる。


俺は、藤城を離れる。


……咲桜のもとを、離れる。