「そうだね。マナちゃんは僕の父親の妹だから、叔母だ。だからこそ、今回の咲桜ちゃんのことに僕も珍しく本気で対応したわけだけど――。……だから、僕がマナちゃんをすきなのは、僕の命への言い訳、かもしれない」


「………」
 

吹雪さんはいつものように、感情の読みにくい笑みだ。


「僕ね、XYYなんだ」


「……え、エックス……?」
 

数式だろうか? 



意味のわかっていない私に、吹雪さんは説明してくれた。


「うん。XYY性染色体異常とも言う。一般的な男性は、XY性染色体だ。

僕は性染色体が通常より、Y染色体――つまり男性性染色体が一本多いんだ。

XXY性染色体異常ってのもあって、これはクラインフィルター症候群って呼ばれる。一時期はこれらが犯罪の――と、これはちょっと脱線するね。時間ないんだった。

ともかく僕はそういう生まれつきのものがあって、これは―――……無精子症候群を引き起こすんだ。

最近では、XYYでも子どもが生まれる例も確認されてるみたいで百パーセントではないけどね。

……女性の咲桜ちゃんにこういう話をするのは気が引けるけど、本当のことなんだ。……ごめんね?」


「い、いえ―――」
 

吹雪さんが、急に私にそんな話をしてくれるなんて……。