「……な、咲桜。どうだろうか」


「どうだろうかって……」
 

唇が震える。


流夜くんは、そっと静かな音で、告げた。


「桃子さんをゆるして、これからも生きてほしい」
 

これからも、自分の血も、ゆるして。


「―――ぁああああああ……っ」
 

悲鳴ごと、抱きしめられた。
 

あの記憶の日以来、ずっとゆるせないでいた。


華取桃子という人を。咲桜と名付けた母親を。
 

自分だけいなくなってしまった、唯一の血の繋がり。
 

在義父さんは優しい人だった。本当の娘と同じように育ててくれた。本当の娘以上に大事にしてくれた。


一生懸命、がんばって生きることで応えて来た。
 

だいじょうぶ、咲桜は、父さんがいてくれるから、大丈夫だよ。母さんの分も、わたしがとうさんに優しくするからね。だから、泣かないで。さおが、がんばるから。


「ばかぁ……っ、母さん……っ、なんで死んじゃったの……っ」