「………っ」
 

床を蹴って、飛びついてきた。


前より重みが少ない。


咲桜は背丈があるんだから軽すぎても心配になると何度も言ったのに。


「ごめんな、待たせて」
 

抱き寄せて、髪を撫でる。


いつもの艶もない黒髪。そこにまで憔悴しているのがわかった。


「咲桜、話したいことがある。俺のとこへ来てくれないか?」
 

咲桜は顔をあげて、見開いた瞳で俺を見上げる。


その首は力なく、ふるふると横に振られた。
 

……なにを言われるか、わかっているのだろう。


「お願いだ。……咲桜にしか、出来ないお願いがあるんだ」
 

そこまで言うと、咲桜は悲しげに口元を歪めて、俺の胸に顔を押し付けて来た。