「………」
 

名前を呼ばれたことはわかった。


緩慢な動作で声の方を見る。


吹雪が仁王立ちしていた。


「今、辛いのは誰?」


「………」


「流夜だよね」


「………」


「咲桜ちゃんだよね」


「………」


「在義さんでもあるし、夜々子さんでもあるし、笑満ちゃんでもあるし、降渡や僕でもある」


「………」


「でも、在義さんも夜々子さんも笑満ちゃんも、僕も降渡も、二人が元気になったら、辛いのは終わるよ」


「………」


「流夜が辛いのは、咲桜ちゃんが辛い思いをしているからだろ? だったら、お前はどうするんだよ」