「わたしがぶつかっちゃったの。ごめんなさい」


「そっか。尊がすまなかった」


「いえ。私もぼーっとしてたので。お連れ様がいてよかったですね」
 

笑みを返したとき、私の方にも呼び声がかかった。


「咲桜―、お待たせ―。ん?」


「ごめん、遅くなった。あ、衛さん? 尊さんも」
 

笑満と一緒に戻って来た先輩が、何故か二人のことを名前で呼んだ。


「遙音先輩、お知り合いですか?」


「え? あー、うん」
 

歯切れの悪い返事だった。


すると、まもると呼ばれた青年が軽く笑った。「遙音」、と名を呼んで。