教務主任・稲葉と、教頭・海彦は俺たちが高校生の頃から藤城にいたはずだ。


「今日はどうしたんですか? いきなりでびっくりしています。それに、神宮先生ですか?」
 

海彦教頭が代表して問う。吹雪はやっぱり微笑んだ。


「なんだ。忘れてるじゃないですか。――今回の交渉人(ネゴシエーター)はこちらの雲居です。僕は依頼者から経過を見守るように仰せつかりました。――降渡」
 

吹雪が話を振ると、降渡は居住まいを正した。


「突然押しかけたこと、謝罪致します。大変失礼致しました。本日は、警察上層部からの依頼を持ってきました。こちらの教師、神宮流夜を警察にいただきたいのです」
 

ざわっと、応接室内もそれが聞こえた廊下もざわめき立った。


俺がイラついたことに、咲桜と遙音は気づいたはずだ。


「警察? 神宮先生、なにかしたんですか?」
 

海彦教頭は驚きの瞳で、つっ立っている俺を見上げてきた。