放課後、私たちは『文芸部』の札がぶら下がった教室に入った。





穂純とは1年生から同じクラスで、出席番号が前後だったことからすぐに仲良くなり、同じ部活に入ることにしたのだ。



文芸部といっても名ばかりで、活動内容は、まさに自由。





文化祭のとき出版する部誌に載せる小説と扉絵さえ書いていれば、他は自由なのだ。













私たちは、それぞれ扉絵の下書きを何日もかけてのんびりと書いている。





「そういえばさ、なんで文芸部に入ろうと思ったの?」



元々文芸部に入ろうと誘ってきたのは穂純の方からだった。



穂純は中学生の頃は吹奏楽部でアルトサックスを吹いていて、ソロのコンクールでも結構いいところまで進むような才能の持ち主だったらしい。



ちなみにこの情報は、本人が教えてくれる訳がないので、同じ中学だった人から聞いた話だ。




「うーーん。なんかね、吹部って何かと忙しいじゃん?だから、ラクに、楽しく活動できる部活がいいなーと思って。」





「ていうか、雅ちゃんも中学生の時は弓道で全国までいったんじゃなかったっけ?本当に弓道部に入らなくて良かったの?」




今更だけど、と付け足して私の顔をじっと見つめる。



いちいち可愛い。





「いいの。あれ以上伸びないな、って感じてたから。」




「ふーん」





聞いたくせに、興味がなさそうに返しやがる。





そうこうしているうちに、18時半の放送が流れ始めた。


放送部の活動なのだが、流す音楽はいつも同じ。切ない恋を歌ったバラードだ。










いつの間にかほかの文芸部員は先に帰っていて、カギが机の上に置いてあった。



2人でギャーギャー愚痴を言いながら、帰途についた。