『Hello.』

「Hello……加賀さん、ですか?
 隼人です。」

『隼人……か。
 久しぶりだな。どうした。』

「加賀さんの大事なモノを速達便で送っておきましたから。」

『は?何を言って………。』

「ナマモノだから何を惜いても取りに行かないと腐っちゃいますからね。」

『ナマモノって、おいっ!』

「一度しか言いませんよ?」

『おいっ!待て!おいっ!!』

 電話口の向こうで何かを派手に倒した音がする。

 慌てて動揺すればいいんだ。

 あのいつも涼しい顔をしていた加賀さんが焦っていると思うとおかしくて、それからやっぱり敵わないなって思うと悔しかった。

「明日の現地時間、午前11時。
 JFK国際空港、アメリカン航空65便。」

 わざと早口でまくし立てて一方的に電話を切った。

 会えなければいいんだ。

 天を仰いでため息を吐いた。

 あの2人の感動の再会の手伝いなんて、僕は大馬鹿者だ。