「なんだかめんどくせーことになってるみてーじゃねーか。」


金剛の工房に顔を出したのは、瑪瑙だった。


「なんだ、瑪瑙か。珍しいな。」


瑪瑙はにやりと笑って金剛の傍に腰掛ける。


「めんどうなことになってるなら、なんか協力してやってもいいぜ?」


金剛はしばし瑪瑙を見つめる。
しばらく考えた後、


「そうだな、城の者に頼むより、お前の方が面倒がないかもしれん。ただし、絶対に他言無用だぞ。」

「それなりの礼を用意してくれるならな?」


金剛は苦笑いする。


「琥珀と違って、お前ってやつは…欲望に忠実だなぁ。」

「じゃぁ琥珀に頼むか?」


金剛はしばし考える。

琥珀は信用がおけるやつだ。
しかし、紅玉のことを想っている。
紅玉との一件も見ている。
そしてあれ以来金剛の工房に姿を見せない。

素直に協力してくれるとは思えない。
ここは瑪瑙に頼む方が得策に思えた。


「いや、やはりお前が適任だ。」

「よし!で?何をすればいい?」


金剛は、さらさらと紙に走り書きをした。


「これを、神殿の三の巫女のところに。」


瑪瑙は驚く。


「神殿?お前…何をやらかすつもりなんだ…?」

「訊かないでくれ。その分口止め料としてしっかり払う。」


瑪瑙は予想外のことに戸惑ったが、しぶしぶと返事をした。


「わかった。これを三の巫女に届ければいいんだな?」

「あぁ、匿名の手紙として、頼む。」

「わかった。」


瑪瑙は立ち上がる。
思っていたより大事になってきているようだ。
頭の中では色々な策略が渦をまきはじめていた。